ネットワーク基礎

MACアドレス、IPアドレスの違いとは?役割と通信の仕組みを図解

MACアドレス、IPアドレスは同じ通信に登場しますが、担当する範囲が異なります。MACは同じリンク上のインターフェースへフレームを届け、IPはネットワークを越えるパケットの宛先を示します。ルーターが両者をどう使うかを、家庭のWi-FiからWebサーバーまでの例で説明します。

2026年10月23日

先に結論:IPはネットワーク間、MACはリンク内で使う

MACアドレス、IPアドレスの違いは「どの範囲の配送を担当するか」です。送信元の端末が別のネットワークにあるWebサーバーへ接続するとき、IPアドレスは経路選択に使われます。MACアドレスは、端末からルーター、ルーターから次の機器という各リンクで使われ、ルーターを通るたびに次のリンク用の値へ置き換わります。どちらか一方だけで通信するのではなく、役割を分けて組み合わせます。

IPパケットはルーターを越えて進み、MACアドレスを含むリンク層のフレームは各区間で作り直される通信経路の図
図は役割の違いを示す概念図です。青はネットワーク間を進むIPパケット、オレンジはリンクごとに組み直されるフレームの経路を表しています。

MACアドレス、IPアドレスの違いを一覧で比較

どちらも通信先を表す情報として見えますが、同じものではありません。MACアドレスはローカルリンク上でフレームの相手を指定し、IPアドレスはネットワーク間でパケットを運ぶための送信元・宛先を示します。

比較点MACアドレスIPアドレス
主な役割同じリンク上でネットワークインターフェースを識別するネットワーク間でパケットの送信元・宛先を示す
主な層データリンク層(OSI参照モデルの第2層)ネットワーク層(OSI参照モデルの第3層)
届く範囲同じリンクやLAN内。ルーター越しに転送されないローカル用とグローバル用があり、ルーティングでネットワークを越える
一般的な表記EthernetやWi-Fiでは16進数6組(48ビット)が一般的IPv4は32ビット、IPv6は128ビット
割り当て・変更アダプターの値を基にするが、OSのランダム化や設定で変わることがあるDHCP、手動設定、ISPなどから割り当てられ、接続先やリース更新で変わることがある
主に参照する機器スイッチや無線アクセスポイントルーター
Webサイトから見えるか通常、インターネット越しのWebサイトには届かない接続元として外部に出るグローバルIPがサーバー側から見える

表の「物理アドレス」という表示名だけで、MACアドレスが必ず固定の工場出荷値だと判断しないでください。現在の端末では、Wi-Fiの追跡を抑えるためにネットワークごとにランダム化したMACアドレスを使う設定があります。また、一般的なEthernetやWi-Fiで使われる48ビット形式を、すべてのリンク技術に当てはめることもできません。

IPアドレスは「どのネットワークへ運ぶか」を示す

IPアドレスは、IPパケットの送信元と宛先を表す論理アドレスです。IPv4は32ビット、IPv6は128ビットで、表記の長さや形式は異なりますが、どちらもネットワーク間でパケットを届けるために使います。IPアドレスは端末そのものに永久に結び付いた番号ではなく、接続しているネットワークや設定に応じてインターフェースへ割り当てられます。

家庭のWi-Fiに接続したスマートフォンには、ルーターがLAN内で使うプライベートIPを割り当てることがあります。インターネット上のWebサイトから見えるのは、通常、家庭のルーターや通信事業者のネットワークを通過した後のグローバルIPです。VPNを使う場合は、接続先のVPNサーバーのIPが外部から見えることがあります。LAN内のIPと外部に出るIPの違いはグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの解説で確認できます。

IPアドレスは経路を選ぶ材料ですが、住所録のように利用者の自宅住所を表すものではありません。IPの位置情報は大まかな地域や通信事業者の推定に限られます。場所を調べたい場合はIPアドレスから分かる場所と位置情報の限界を参照してください。

MACアドレスは「次のリンク上の相手」を指定する

MACアドレスは、EthernetやWi-Fiなど同じネットワークリンク上でフレームを届けるために使われます。端末のWi-Fiアダプター、有線LANポート、USB LANアダプターなど、別のインターフェースには別のMACアドレスがあるのが一般的です。MACアドレスの先頭部分から割り当て元の識別情報を読み取れることはありますが、MACだけで端末の持ち主や居場所を確定できるわけではありません。

スイッチは受信したフレームの送信元MACを学習し、その宛先MACがどのポートにあるかを使ってLAN内の転送先を決めます。無線アクセスポイントも、Wi-Fi区間でフレームを扱います。一方、インターネット上の別ネットワークへ送る経路はMACアドレスでは選びません。そこではルーターがIPアドレスと経路表を見て、次に渡すネットワークを選びます。

そのため「MACアドレスは端末の名前、IPアドレスは現在の通信上の住所」という例えは、役割をつかむ導入には使えますが、完全な定義ではありません。MACもランダム化やソフトウェア設定で変わることがあり、IPもサブネットやNATなどネットワーク構成によって見え方が変わります。

端末からWebサーバーまで、両方のアドレスが働く流れ

同じ通信でIPアドレスとMACアドレスがどう協力するかは、家庭の端末から遠くのWebサーバーへアクセスする例で考えると分かりやすくなります。以下のIPやMACは説明用の例であり、特定の利用者や実在する機器の値ではありません。

  1. 宛先IPを決める:ブラウザーが接続先のIPアドレスを使って、送りたいIPパケットの宛先を示します。遠隔サーバーが別ネットワークにある場合、端末は自分のサブネット外へ送る必要があると判断します。
  2. 次の相手を決める:端末が最初にフレームを渡す相手は、通常、外部サーバーではなくLAN内のデフォルトゲートウェイです。端末はゲートウェイのIPに対応するMACアドレスを調べます。
  3. ローカルフレームを送る:IPv4ではARPを使い、LAN上で「このIPを持つ相手はどのMACか」を問い合わせます。対応が分かると、そのMACを宛先とするフレームにIPパケットを載せてルーターへ渡します。
  4. ルーターが次の区間へ中継する:ルーターは受け取ったフレームを処理し、宛先IPと経路表から次の転送先を選びます。その次のリンクに合わせて新しいフレームを作り、次ホップのMACを指定します。
  5. サーバーへ届く:この処理がネットワーク区間ごとに繰り返されます。宛先IPは最終サーバーへの転送判断に使われ、MACアドレスは現在の区間でフレームを渡す相手を示します。NATがある経路ではIPヘッダーのアドレスも変換されることがあります。

要点は、端末から見た「最終的な宛先IP」と「最初のリンクの宛先MAC」が別の相手を指すことです。最初のMAC宛先はルーターで、IP宛先は遠くのサーバーです。遠隔通信のたびに、端末が最終サーバーのMACをインターネットから探しているわけではありません。

ARPとIPv6のNDPがIPアドレスとMACを対応付ける

IPv4のLANで宛先IPしか分からないとき、端末はARP(Address Resolution Protocol)を使って同じリンク上の対応するEthernetアドレスを確認します。問い合わせの結果は一定時間キャッシュされるため、同じ相手へ送るたびに必ず全端末へ問い合わせるわけではありません。WindowsやmacOS、LinuxのARP・近隣キャッシュを調べると、最近通信した相手のIPとMACの組み合わせが見つかる場合があります。

ARPの範囲はローカルリンクです。別のサブネットにある端末のMACを、インターネット越しに問い合わせるプロトコルではありません。中継ルーターは、次の区間で必要になる情報をそれぞれ扱います。IPからMACへの対応付けの基本仕様はIETF RFC 826で確認できます。

IPv6では、ARPではなくICMPv6を使う近隣探索(Neighbor Discovery Protocol、NDP)が同じリンク上の到達先を調べます。IPv6アドレスの一部がMACアドレスから常に直接計算できると考えるのも正確ではありません。プライバシーを考慮した一時アドレスなど、現在のOSではMACと単純に結び付かないアドレス生成が使われます。IPの基礎仕様はIETF RFC 791に記載されています。

用途ごとに、確認するのはIPアドレスかMACアドレスか

知りたいこと確認する情報よく使う場所
Webサイトや外部サービスから見える接続元グローバルIPIP確認ページ、サービスのアクセスログ
家庭内の端末に割り当てられたLANアドレスプライベートIP端末のネットワーク設定、ルーターのDHCP一覧
ルーターの接続端末一覧で機器を区別する接続中のMACとLAN内IPルーターの管理画面
DHCP予約で端末に同じLAN内IPを割り当てる接続中のMACと予約するIPルーターのDHCP設定
社内LANの別セグメントへ到達できるか調べるIP、サブネット、ゲートウェイ、経路端末設定とルーターの経路情報

MACアドレスフィルタリングやDHCP予約を設定する場合は、端末情報画面の工場出荷時の値をそのまま登録するのではなく、接続中のWi-Fiで現在使われているMACを確認してください。ランダムMACが有効なら、同じ端末でもネットワークごとに値が異なり、設定に登録した値と接続時の値が合わないことがあります。OS別の確認手順はMACアドレス確認方法を参照してください。

自分の外部IPを確認する目的なら自分のIPアドレス確認、入力したIPの位置情報やネットワーク情報を見る目的ならIP住所検索ツールが該当します。知りたい値を先に決めると、IPとMACの表示を取り違えずに済みます。

IPは変わるのにMACは変わらない、とは限らない

一般的な説明では、IPアドレスはネットワークに応じて変わり、MACアドレスはアダプターに結び付いているとされます。ただし、これは傾向を示す説明であって、常に変化する・変化しないという規則ではありません。DHCPで割り当てられたIPは、リース更新やルーターの設定、Wi-Fiからモバイル回線への切り替えで変わることがあります。外部から見えるIPは、ISP、VPN、プロキシ、NATの構成によっても異なります。

MACアドレスもOSやアダプターの設定で変更・ランダム化できます。特に公衆Wi-Fiなど複数の場所を移動する端末では、固定の値を使った追跡を減らすため、接続先ごとにプライベートWi-Fiアドレスを使う機能があります。ルーターに登録したMACと接続端末一覧のMACが違う場合は、別アダプターを見ていないか、Wi-Fiのランダム化が有効か、古いDHCP予約を参照していないかを確認します。

IPアドレスだけで個人や建物を特定できる、またはMACアドレスがインターネット上のWebサイトへ必ず送られる、という説明は誤りです。IPはネットワーク上の通信先情報であり、MACはリンク内の配送情報です。どちらもアクセス制御や本人確認の単独根拠にせず、必要なログ、認証、端末管理情報と目的に応じて組み合わせてください。

MACアドレス、IPアドレスに関するFAQ

MACアドレスからIPアドレスを調べられますか?

同じLANに接続していて、その端末の通信情報が残っていれば、ARP・近隣キャッシュやルーターのDHCP一覧で対応を確認できることがあります。別のネットワークにある機器や、インターネット上の任意の端末について、MACアドレスだけでIPを検索することはできません。

WebサイトにはMACアドレスも伝わりますか?

通常、Webサイトへ通信元として届くのはグローバルIPアドレスです。MACアドレスはローカルリンクのフレームに含まれ、ルーターで次のリンク向けに作り直されるため、Webサイトまでそのまま運ばれません。

IPアドレスとMACアドレスのどちらが固定ですか?

どちらも絶対に固定とは言えません。IPは接続先やDHCP設定で変わり、MACはランダム化、アダプター交換、ソフトウェア設定で変わる場合があります。設定を確認するときは、いつ、どの接続で見た値かも記録します。

MACアドレスは端末1台につき1つですか?

通常はインターフェースごとにあります。Wi-FiとEthernet、USB LAN、仮想ネットワークはそれぞれ別の値を持つことがあります。接続先固有のランダムMACが有効なら、同じWi-Fiアダプターでもネットワークごとに値が異なります。

IPv6アドレスはMACアドレスと同じものですか?

同じものではありません。IPv6はネットワーク層のIPアドレスで、NDPがローカルリンク上の隣接ノードを探索します。古い方式ではMAC由来の情報をインターフェース識別子に使う場合がありましたが、現在はプライバシー保護のため一時アドレスなども使われます。

まとめ

MACアドレス、IPアドレスの違いは、配送を担当する範囲にあります。IPアドレスはネットワーク間の宛先を示し、MACアドレスは同じリンク上で次の相手へフレームを渡すときに使います。ルーターはIPを見て経路を選び、次のリンクのためにフレームとMACの宛先を組み直します。

Webサイトから見える接続元を知りたいならIPを、LAN内で端末やDHCP予約を確認したいなら接続中のMACとプライベートIPを調べます。用途ごとの表示場所はMACアドレスの確認ガイドとIPアドレスの基礎ガイドも参考にしてください。